高齢者の生き方について考察が深まったー『孤独こそ最高の老後』を読んで

松原惇子さんの『孤独こそ最高の老後』を読んだ。読み進めるうちに、「孤独」な高齢者とは一体どういう意味なのか、多くの疑問が出てきた。この本では「孤独」という言葉が、主に「一人でいること」や「独身であること」という意味で使われているように思う。

わたしはひとり女性の老後を応援する団体であるNPO法人「SSSネットワーク」(以下「SSS」)を立ち上げ、運営している。この活動を通じて、多くの「孤独老人」を見てきた。男女合わせて1000人は超えている。
わたし自身も、70歳を過ぎていてずっと独身だから、孤独老人のひとりだ。

松原 惇子. 孤独こそ最高の老後 (SB新書) 

孤独老人という強い言葉に一瞬ギョッとしたが、著者自身も孤独老人だということ。

著者の主張は大まかに以下のようなものだ。
・一人になるのを避けて老人ホームに入居すると不幸になる
・一人になるのを避けて後妻や養子を作ると不幸になる
・定年後の夫はただ邪魔なだけ
・妻は夫のお金しか目当てにしていない
・日本の高齢者は元気がないが海外はもっと元気がある
・子供や孫は金の無心に来るだけ
・一人でいた方がなんでも自分の好きなようにできる
独身で子供もいない、老人ホームにも入っていないという著者自身の生き方を肯定するだけの本のように私には思えた。タイトルの『孤独こそ最高の老後』は『ビバ!私の老後の生き方』というエッセイに変えた方がいいとさえ思う。

冒頭にも書いたように、この本を読みながら「孤独」な高齢者といっても色んな切り分け方があるのではないかという問いが出てきた。(ただし本書の中では全て一緒くたにされている)
たとえば以下のようなものだ。
・身寄りのあるなし
・一人で暮らしているか、どうか
・孤独であるかどうか(他者とのあいだに隔たりを感じるか、つながりがあるか)
・寂しいかどうか

老人ホームに入れられた老人は、どんなに立派なところを用意されても、家族に捨てられたという思いがあるからだろう。

松原 惇子. 孤独こそ最高の老後 (SB新書)

一方、大家族の中で100歳を迎えた人は、決して「死にたい」とは言わないだろう。

松原 惇子. 孤独こそ最高の老後 (SB新書)

確かに身寄りや家族がいる人は、老人ホームに入ると一人ではなくなるが、孤独を感じ寂しいと思う人もいるだろう。では身寄りがなく、老人ホームに入った人はどうだろう?他の高齢者の中で逆に孤独を感じるかもしれないし、むしろすごく楽しめるかもしれない。この本は1000人以上の高齢者を見てきたという著者の実績に反して、当事者である高齢者のインタビューが乏しい。高齢者自身の状況・感情などが具体的に書かれていたらどんなに良かったろうと思うが、書かれているのはほとんどが著者の推測だ。

どこの有料老人ホームも同じだが、こちらも男性の入居者が少ない。ひとりでランチを食べている男性の身なりがいい分、寂しく感じられる。表情がとても悲しそう。男性は、誰とも挨拶もしなければ、言葉も交わしていない。黙って座り、黙って食べ、黙って席を離れる。
人とかかわりたくないのだろう。いえ、男性の場合は妻に先立たれ、子どもの都合でここに入居させられたに違いない。子どもの職業はおそらく、弁護士か医者だ。近所の人も羨む施設生活。しかし、その父親の心の中はどうだろうか。この寂しげなランチタイムの父親の姿を子供は知らない。

松原 惇子. 孤独こそ最高の老後 (SB新書)

見ただけで子供の職業までわかってしまうとはすごい能力だ。それよりも彼に直接インタビューしろよとツッコミを入れたくなる。反対に、著者がオランダにある認知症の人のためのデイサービスを見学したときは、シワのないシャツを着てピカピカの靴を履いた男性たちや、カラフルな服装やアクセサリーの女性たちの明るい姿を見て、人生を楽しんでいるように“見えた”そうだ。ここの人たちも認知症とはいえ、ぜひインタビューしてもらいたかった。本書の冒頭で著者自身が言っていたことだが、(日本の)施設は訪問者がいるときはみんな元気に挨拶するが普段は「死にたい」と言っているらしいじゃないか。実情はどうなんだろうと興味を持った。

90代で持ち家で一人暮らしの女性について、彼女は全く寂しくないと言っているのに対しての著者の言葉。

他人から見て、どんなにひどい条件であれ、本人が幸せなら幸せなのだ。幸せにはいろいろな形がある。条件を判断して「この人は寂しい、みじめだ」と決めつけるほうが間違いなのだと、わたしは心から反省した。自分の価値観で人を見てはいけないのだ。

松原 惇子. 孤独こそ最高の老後 (SB新書)

ここで反省したのも束の間、その後は再び自分の価値観を全開にして本書を書いてしまったように私には見えた。

ということで、一言「孤独」と言っても、身寄りのあるなしや、一人暮らしかどうか、孤独であるか、寂しいかなど、色々な切り分け方が存在し、高齢者一人一人の立場などによって多様な生き方があるのではないかと、この本を読んで思った。

そして最後に、高齢者の「寂しい」という感情はどうすればいいのか?

「一人が寂しい」と思う背景には「人を欲する」気持ちがあるからだろう。人を欲さなければ、一人でいても寂しいという気持ちは起こらない。

松原 惇子. 孤独こそ最高の老後 (SB新書) 

老後が近づいてくると、わたしもそうだが、ふと誰かを求めがちになるが、弱い心に蓋をして人間に求めず、求めるなら猫と暮らすことをわたしはお勧めしたい。

松原 惇子. 孤独こそ最高の老後 (SB新書) 

自身も猫を飼っている著者の主張は、人を欲せずに猫を飼うのがいいらしい。果たして猫を飼うということは「孤独」を避けようとしてはいないか?依存先が猫になっただけのような気もする。

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