書名:デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
著者:フランク・ハーバート (1920-1986)
訳者:酒井昭伸
著者国籍:アメリカ
発行年:2016年(初出:1965年)
アトレイデス公爵は皇帝の命を受け、惑星アラキスに移封されることになる。過酷な砂漠の惑星アラキスは、抗老化作用を持つ香料メランジの唯一の産地である。宿敵ハルコンネン家に代わりそこを支配することは、表面的には公爵家に大きな名誉と富を約束する。皇帝やハルコンネン男爵の罠だと知りつつ、公爵は息子ポールの未来のため惑星アラキスに乗り込むが……ヒューゴー・ネビュラ両賞受賞の壮大な未来叙事詩を新訳で!
amazon デューン 砂の惑星〔新訳版〕 上
主人公が運命に翻弄されていく様子が、これまで読んできた「自分の力で切り開いていく少年の冒険物語」とは違っていて、いろんな意味で考えさせられた作品です。
ティモシー・シャラメ主演で映画化もされたSF小説。映画をより深く理解するうえでも、原作を読むことはとても役立ちます。
「デューン 砂の惑星」上・中・下巻は映画『DUNE/デューン 砂の惑星』と『DUNE/デューン 砂の惑星 PART2』に相当し、12月公開予定の『DUNE/デューン 砂の惑星 PART3』は「デューン 砂漠の救世主」に相当する予定です。
以下、「デューン 砂の惑星」上・中・下巻を読んだ感想です。ネタバレあり。
感想
ベネ・ゲセリットの力でポールが勝ったのにモヤモヤする
上・中・下巻を読んで思ったこと、「ベネ・ゲセリット最強ですやん」。
細かく言うと「ベネ・ゲセリットの力」が最強だと思う。上巻の時点で、スフィル・ハワトがジェシカに「いっそ、その力で、公爵閣下の敵を滅ぼし去ってはどうです」と聞いた時は、まさしくそれ!と頭が取れそうなくらい頷いた。ジェシカは「わたしたちはほんとうに、仕えるためにのみ存在するのよ」と返す。
いやでもしかし。帝にも読心師として教母がついてるし、帝の娘にもベネ・ゲセリットの教育を施してるし、いろんな有力者とベネ・ゲセリットの子供をもうけてクウィサッツ・ハデラックを誕生させようとしているし。天下取ろうとしてません?と思ってしまう。
ポールが帝に勝てたのはベネ・ゲセリットの力が多分にあると思う。最後のフェイド=ラウサとの決闘で、最初に切りつけてきたのはフェイド=ラウサの方だ。剣先に何かが塗ってあったらしく切られた部位からポールの体内に成分が入ってしまった。それをポールはベネ・ゲセリットの修行で身につけた «内なる感覚で »調べ、成分を分析し、代謝を調整して無効にする。フェイド=ラウサの剣に塗られていたのは催眠剤で、無効にできなければ戦いには大いに不利になっただろう。結果、ポールは形勢を逆転して勝ったけども。それでいいのか?
私はなんでモヤモヤするんだろう?
いわゆる少年の冒険物語って、失敗や挫折に対して自分の力で切り開いていく話が多い。しかしデューンでは運命やベネ・ゲセリットによって作られた流れが強い。ポールはそれを避けられずに葛藤もするけど、最終的にはベネ・ゲセリットの修行のおかげもあり帝に勝利する。この違いが私の中でモヤッとしたんだと思う。私にとってみれば、ポールは何でもできちゃうし、強い。それが、「なんかずるい!」というモヤっとした感情を抱いた理由なのかもしれない。
SFとは何か?
(SF:サイエンスフィクション、科学的な空想に基づいた作り話)
もしデューンからベネ・ゲセリットの存在がなくなったら、アトレイデス家は全員やられて終了!話が進まない。つまりこの物語を形作っているものは、科学技術というより、ベネ・ゲセリットをはじめとする宗教や民族、権力争いだと思う。このことから、この話はSFなのかと疑問に思った。
解説によると「デューン 砂の惑星」はローカス賞のオールタイムベスト部門でいつも一位らしい。だから私の疑問に反してこの小説はSFの中でも大御所な存在なのだろう。私がSF初心者なだけなのかもしれない。
私が思い描いていたSFはずばりスターウォーズ。近未来、あるいはすごい先の未来の宇宙の話。ロボット、乗り物、未来の機械。デューンの中でも保水スーツなんかは私のイメージにぴったりのSFグッズだ笑。
逆に、この話の中の宗教や砂漠や自然が私の中でSFというカテゴリーに入っていなかった。私の中では科学的なデバイス=SFだったが、科学的な進歩の先にある空想的なお話と定義し直せるのかも。今後SF作品を読んでいく上でSFとは何か?という問いを持ち続けたい。
ポールの予知したジハードとは何だったのか?
物語の序盤からポールはジハードを予知していた。私はてっきりハルコンネンと帝を倒すことがジハードになるのだと思っていたが、どうやら違うらしい。
ポール自身はジハードは何としても食い止めなければいけないという認識で、ポールが帝座につくのもそれが理由だと言っている。
それではポールが予知したジハードとは何なのだろう?ポールは自分がフレメンの中で宗教的な象徴となっていくのに危機感を感じていた。スティルガーが友から一介の崇拝者になってしまったと感じ落胆する部分もあった。
今のところ私の予想では、フレメンがポールを崇拝し、香料を我が物顔で扱う全ての人間との(すなわちフレメン以外との)戦い(ジハード)に暴走してしまうのではと考えている。
良かった点
良かった点を二つ挙げると、一つ目は物語の構成が良かった。各章の始めに、後世に書かれた本の一節が必ず載っている。最初は何を言ってるのか全くわからないが、読み進めていくうちにプリンセス・イルーランとは帝の娘であるとか、ムアッディブとはポールのことであるらしいというのがわかってくる。それが面白かった。
そして二つ目。ポールとジェシカがフレメンの仲間に入った時。ボスのスティルガーがポールに呼び名はどうするかと聞き、ポールはネズミのことをフレメンはなんて呼ぶのかと返す。
「われわれはあれをこう呼んでいる──ムアッディブと」
一つ目で言った、各章の最初に読まされる未来の書物でポールはムアッディブだと度々示されていたのがここで合致して鳥肌がたった。

続き「デューン 砂漠の救世主」でジハードが何なのか確かめるか。
こちらもどうですか→「塩をまく」の意味~Dune 砂の惑星からの疑問~
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